この記事でわかること
- 手首や指が痛むときの原因とメカニズム
- 手首・指の痛みの主な原因(腱鞘炎・関節・神経・血流など)
- 手首・指の痛みに隠れている病気(腱鞘炎・関節症・手根管症候群など)
- 手首・指の痛みを和らげる治しかた・セルフケア方法
- 整形外科や手の外科を受診すべき症状の目安
手首・指が痛い
「手をつくとズキッと痛い」「朝、指がこわばって動かしにくい」「最近スマホを持つだけで手首がだるい」
手や指の痛みは、日常生活のあらゆる動作に関わるため、少しの不調でも強い不便を感じる症状です。
一口に“手の痛み”といっても、その原因はさまざま。
指の関節や手首は細かい動きを支える分、小さな負担が積み重なって痛みになることが少なくありません。放置すると、痛みだけでなく「物を握りにくい」「ボタンがかけづらい」「ペットボトルのフタが開けられない」など、日常動作の制限につながるケースもあります。
手首・指が痛い原因
手首や指の痛みは、「筋肉・腱」「関節・軟骨」「神経」のどこにトラブルがあるかで原因が異なります。ここでは、臨床でもよく見られる3つの主要なメカニズムを整理して解説します。
筋肉や腱の使いすぎによるもの(オーバーユース)
もっとも多いのが、手や指を酷使することによる筋肉や腱の炎症です。
パソコン作業、スマートフォン操作、家事、育児など、同じ動きを繰り返すことで腱が摩擦を起こし、炎症が発生します。
代表的なのが、手首の腱鞘炎(ドケルバン病)やばね指(弾発指)。
どちらも指や手首を動かすたびに「ズキッ」「引っかかる」といった痛みを伴います。
特に更年期や妊娠・出産後の女性ではホルモンバランスの影響で起こりやすい傾向があります。
こんなときは注意
-
- 手首を動かすとズキッと痛む
- 朝、指がこわばる・引っかかる
- ペットボトルのフタが開けにくい
- 指がカクンカクンなる
関節・軟骨の変化によるもの(加齢・変形)
加齢や過剰な負担によって、関節を構成する軟骨がすり減ると、変形性関節症を発症します。
手首や指の関節が変形し、動かすたびに「ギシギシ」「ズキズキ」と痛むのが特徴です。
特に、指の第1関節(DIP関節)に起こるヘバーデン結節や、第2関節(PIP関節)に起こるブシャール結節は、中年以降の女性に多く、関節が腫れて硬くなるのが特徴です。
また、手首の関節に生じる関節リウマチでは、痛みとともに朝のこわばりが強く出る傾向があります。
こんなときは注意
-
- 関節が腫れて曲がってくる
- 朝起きたときにこわばる
- 指の形が徐々に変わってきた
神経の圧迫や血流障害によるもの
手首や指には多くの神経が走っており、圧迫や炎症によって痛みやしびれを生じることがあります。
代表的なのが、手根管症候群。
手首の中を通る「正中神経」が圧迫され、特に親指~薬指にかけてのしびれや痛みが出ます。
夜間や朝方に症状が強く出ることが多く、「手を振ると少し楽になる」という特徴もあります。
また、頚椎(首の骨)から手へつながる神経が圧迫されて生じる頚椎症性神経根症でも、
首~肩~腕~手にかけて痛みやしびれが広がることがあります。
こんなときは注意
-
- 手のしびれや感覚の鈍さがある
- 夜間に痛みやうずきを感じる
- 指先の細かい動作がしづらい
靭帯や関節の不安定性
「捻っていないのに痛い」場合でも、過去の軽い捻挫が原因で、靭帯がわずかに伸びているケースがあります。靭帯は自然には完全に元通りになりにくく、関節の安定性が失われると、ちょっとした動きでも炎症を繰り返します。
この状態を足関節不安定症と呼び、放置すると変形性足関節症の前段階になることもあります。
特に、階段を降りる時・坂道を歩く時に「なんとなくグラつく」「踏ん張ると痛い」と感じたら注意が必要です。
骨や軟骨のトラブル
腫れていないのに痛い原因として、疲労骨折や軟骨の損傷が隠れていることもあります。
特にマラソン・バスケットボールなどで繰り返し負荷がかかると、脛骨や距骨(きょこつ)に小さなヒビが入る「疲労骨折」が発生します。
初期は痛みが軽く、レントゲンでも写らないことがあるため、「筋肉痛だと思っていたら骨折だった」というケースも珍しくありません。痛みが長引く場合はMRIなどの精密検査が必要です。
神経・血流の問題
神経の圧迫による痛みも見逃せません。足首の内側を通る神経が圧迫されると、「しびれ」「ピリピリ感」「焼けるような痛み」が出ることがあります。これは足根管症候群と呼ばれ、足の裏まで違和感が広がるのが特徴です。
また、冷え性や血流の悪化によっても、筋肉が固まり、足首の奥に重だるさを感じることがあります。
体の使い方や姿勢の癖
実は、足首の痛みは全身のバランスとも関係しています。猫背・骨盤の歪み・偏平足などがあると、体重のかかり方が偏り、片方の足首ばかりに負担がかかります。
💡特に、立っているときに足の内側に重心が偏る人は要注意。この歩き方は、後脛骨筋腱や内側の靭帯を過度に引っ張り、「捻っていないのに内くるぶしが痛い」状態を招きやすくなります。
手首・指の痛みに隠れている病気
手や指の痛みは、使いすぎによる単なる疲労と思われがちですが、中には進行性の疾患や神経・骨の異常が隠れていることもあります。早期に治療すれば回復するものも多いため、以下のような症状がある場合は整形外科での診察をおすすめします。
腱鞘炎
(ドケルバン病・ばね指)
ドケルバン病は、親指の付け根にある2本の腱が炎症を起こすことで、手首の親指側に痛みや腫れが出る疾患です。
物をつまむ・抱っこする・スマートフォンを操作するなどの動作で悪化します。一方、ばね指(弾発指)は指の腱が腫れて動きがスムーズにいかなくなり、曲げ伸ばしの途中で「カクッ」と引っかかるのが特徴です。
特に、更年期や出産期の女性・ピアノやパソコンを長時間使う方に多く見られます。
母指CM関節症
(親指の付け根の変形性関節症)
ビンのフタを開ける、つまむ、ペンを持つ、そんな動作で親指の手首側の付け根に痛みを感じる場合、母指CM関節症の可能性があります。
関節軟骨のすり減りや関節のゆるみが原因で、進行すると親指が開きにくくなり、関節が変形して膨らむこともあります。
主婦病といわれ中高年の女性に多く、慢性的な手の使いすぎが引き金になることが多いです。
ヘバーデン結節・ブシャール結節
40歳以降の女性に多い、指の第1関節(ヘバーデン)や第2関節(ブシャール)が変形する疾患です。指先が腫れたり、こぶのような膨らみができたりします。
痛みが続くと関節が硬くなり、曲げ伸ばしが難しくなることも。
遺伝的な要因やホルモンバランスの変化、手の酷使が関係しているといわれています。
手根管症候群
(しゅこんかんしょうこうぐん)
親指から薬指にかけてのしびれ・痛みが続くときは、手首の中を通る「正中神経」が圧迫される病気、手根管症候群が疑われます。
夜間や朝方にしびれが強く、「手を振ると少し楽になる」特徴があります。
症状が進むと親指の付け根の筋肉がやせ、ボタンを留めるなどの細かい作業が難しくなります。
長時間の家事・育児、デスクワーク、更年期や妊娠期の女性に多くみられます。
ガングリオン
(こぶ状のしこり)
手首や指の関節にできるゼリー状の袋で、ガングリオンと呼ばれます。
良性で痛みがありませんが、神経の近くにできると痛みやしびれを引き起こすことがあります。
自然に小さくなることもありますが、再発を繰り返す場合は穿刺での内容物排出や摘出手術で治療しますが再発することがあります。
キーンベック病(月状骨壊死)
手首の中心にある「月状骨」が血流障害によって骨壊死(骨に血が通わず腐ってしまう)する病気です。
初期には手首のだるさや鈍い痛みとして現れますが、進行すると骨がつぶれて関節が変形し、
手首の動きが制限される・握力が低下するといった症状が出ます。
20〜40代の男性や、手をよく使う職業の方に多いとされます。
橈骨遠位端骨折(手首の骨折)
転倒して手をついたあと、手首の腫れや変形が強い場合は、橈骨遠位端骨折の可能性があります。
受傷直後から徐々に腫れてきて、変形・強い痛みを伴います。
骨が成熟していない小人では若木骨折といわれる草の茎が捻じれるような骨折をきたします。
骨折を放置すると変形が残り、手首の可動域が制限されることがあるため、早期の治療が必要です。
関節リウマチ
複数の指や手首の関節に腫れやこわばりがあり、朝方に動かしにくい場合は、リウマチの初期症状かもしれません。
自己免疫の異常で関節に炎症が起こり、放置すると関節の破壊や変形が進みます。
近年は早期治療によって進行を止められるケースも多く、早めの診断が重要です。
手首・指の痛みの治し方・セルフケア
まず大切なのは「安静」と「正しい使い方」
手や指の痛みを早く治す基本は、使いすぎを止めること。
痛みを我慢して動かし続けると炎症が悪化し、腫れ・しびれ・変形につながることがあります。
特に家事・育児・仕事などで手を酷使している場合は、休ませる時間をつくることが何より重要です。
包帯やサポーターで軽く固定することで、患部の安静と再発防止にもつながります。ただし、固定しすぎて動かさなくなると関節が固まる恐れもあるため、医師の指示に従って使いましょう。
ケアのご紹介
簡単にできるストレッチや、ご自宅で出来るケア方法をいくつかご紹介いたします。
温めて血流をよくする
慢性的な痛みやこわばりがあるときは、温熱療法が効果的です。血行が改善すると、炎症物質や老廃物が流れ、回復を助けます。
自宅では以下の方法がおすすめです。
- 蒸しタオルを手首や指に5〜10分ほど当てる
- ぬるめのお湯(38〜40℃)に手を浸す
- 入浴中に軽くグーパー運動をする
一方で、急な腫れや強い痛みがあるときは冷却(アイシング)が有効。
受傷直後の熱感を伴う痛みには、15分ほどを繰り返して炎症を抑えます。
簡単にできるストレッチと動かし方
痛みが落ち着いたら、筋肉や腱の柔軟性を取り戻すための軽いストレッチを行います。
無理のない範囲で、痛みが出ない動きを意識しましょう。
手首のストレッチ
肘を伸ばして腕を前に出し、反対の手で手首をゆっくり曲げる。上下に動かして、手首まわりの筋肉を伸ばします。
指のストレッチ
手をしっかりパーに開いて、指を1本ずつ反対の手でゆっくりゆっくり、しっかり曲げ伸ばしをするグー・パー運動。
※痛みやしびれが出るときは、すぐ中止してください。
日常生活でできる予防と工夫
- 長時間の作業は業はこまめに休憩を取るに休憩を取る
- スマホ操作やパソコン操作の姿勢を見直す
- 冷えを防ぎ、手を温める習慣をつける
- 指先に力を入れすぎない(特に更年期・妊娠期の女性は要注意)
特に女性はホルモン変化の影響で腱や関節が弱くなりやすいため、「疲れる前に休む」ことが最大の予防になります。
病院を受診すべきサイン
次のような場合は、整形外科・手の外科の受診をおすすめします。
-
- 痛みが2週間以上続く
- 指が引っかかる・曲げ伸ばしができない
- 夜間や安静時にもズキズキ痛む
- 手や指にしびれ・感覚の鈍さがある
- 物をつまむ・持つ動作が難しい
放置してしまうと関節の変形や神経障害が進行し、回復まで時間がかかることがあります。早めの診察が早期回復のカギです。

