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膝の痛み

この記事でわかること

「膝が痛い」と一口にいっても、その原因はさまざまです。本記事では整形外科の視点から、次のような疑問に答えます。

  • 急に・突然膝が痛くなるのはなぜ?
  • 膝の内側・外側が痛いときに考えられる病気は?
  • 階段の昇り降りで膝が痛いのはなぜ?
  • 膝痛に隠れている可能性のある病気(変形性膝関節症・半月板損傷・リウマチなど)
  • 膝が痛いときに「やってはいけない行動」と正しいセルフケアの方法
  • 症状が出たら整形外科を受診すべきか

膝が痛いのはなぜ?原因と背景

急に膝が痛い!内側の痛みの原因や若い人も注意な病気とは?|和歌山市の整形外科「ほんだ整形外科」膝の痛み(膝痛)は「病名」ではなく、膝関節やその周囲に表れる症状の総称です。
スポーツや仕事での負担、加齢による関節の変化、筋肉の衰え、体重増加、生活習慣の影響などが複雑に絡み合って起こります。

実際に、国民生活基礎調査でも「膝の痛み」は高齢者の自覚症状の上位に挙げられており、多くの人が一度は経験する身近なトラブルです。

一方で、症状の背景には変形性膝関節症や半月板損傷、リウマチなど病気が隠れていることもあるため、「年齢のせい」「運動不足だから」と安易に自己判断せず、原因を整理することが大切です。

膝痛の主な原因

膝痛の主な原因膝関節は「大腿骨(太ももの骨)」「脛骨(すねの骨)」「膝蓋骨(お皿の骨)」「軟骨」「半月板」「靭帯」から構成され、周囲のバランスをとることで安定しています。

しかし、生活習慣や加齢、スポーツでの負担などによってこのバランスが崩れると、関節や軟骨に過剰なストレスがかかり、膝の痛みが生じます。

代表的な原因は次の3つに分けられます。

膝が痛いのは運動不足や筋力低下が原因?

運動不足や加齢で筋肉が衰えると、膝を安定させる力が弱まり、関節や軟骨に直接負担がかかります。特に次の筋肉が弱くなると膝痛を起こしやすくなります。

大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)

階段の昇り降りや立ち上がり動作を支える

ハムストリングス(太ももの裏の筋肉)

太ももの裏にある3つの筋肉(大腿二頭筋・半膜様筋・半腱様筋)の総称で、膝の曲げ伸ばしを安定させる

中殿筋や臀部の筋肉

体のバランスを保ち、膝への負担を軽減する

「階段の昇り降りで膝が重い」「立ち上がるときに違和感がある」などは、筋力低下のサインかもしれません。

急に・突然膝が痛くなる原因とは?

「昨日までは何ともなかったのに、急に膝が痛くなった」というケースもあります。この場合、外傷や炎症、結晶による急性疾患が原因であることが多いです。代表例としては以下が挙げられます。

靭帯損傷(前十字靭帯・内側側副靭帯など)

スポーツや転倒で膝をひねったときに発症

半月板損傷

急な動作や繰り返しの負荷で損傷。膝が「引っかかる」「動かない(ロッキング)」などの症状を伴う

関節の炎症(滑膜炎など)

急に膝が腫れて熱を持つのが特徴

痛風や偽痛風

尿酸やピロリン酸カルシウムの結晶が関節に沈着し、突然の激痛や腫れを起こす

💡「膝が腫れて熱を持っている」「動かすのが困難」という場合は、自己判断せず早めに整形外科での受診が必要です。

加齢で膝が痛くなるのはなぜ?

年齢を重ねると、膝関節を保護する関節軟骨が徐々にすり減り、弾力性を失います。その結果、骨同士が直接こすれ合い、炎症や痛みが起こりやすくなります。代表的な疾患が変形性膝関節症です。

  • 初期…「立ち上がりや歩きはじめに痛む」
  • 中期…「階段の昇り降りがつらい」
  • 進行期…「安静時でも痛む」

さらに、加齢による骨粗鬆症で膝周囲の骨が弱くなると、転倒などで骨折を起こしやすくなります。
加えて筋肉量の減少も膝の負担を増やし、慢性的な膝痛の悪循環を招く要因となります。

💡このように「筋力低下」「急な外傷」「加齢変化」は、膝痛の三大原因といえます。
次の章では、「膝のどこが痛いか」「どんなときに痛いか」という状況別に原因を詳しく見ていきましょう。

部位・状況別の膝痛の出方

膝の痛みは「どこが痛むか」「どんなときに痛むか」によって原因をある程度推測できます。
ここでは代表的な部位別・シーン別の膝痛の特徴を整理します。

膝の内側が痛いときに考えられる原因

膝の内側が痛いときに考えられる原因膝の内側は歩行や立ち上がりなどで体重が集中しやすく、不調が起こりやすい部位です。代表的な疾患には以下があります。

鵞足炎(がそくえん)

膝の内側下部に痛み。階段やランニングで強まり、押すとピンポイントで痛い。

変形性膝関節症

加齢や軟骨の摩耗で膝関節が変形。初期は「立ち上がりや動き始めの痛み」、進行すると「歩行や安静時の痛み」へ。

半月板損傷

膝のクッションが損傷し、内側に鋭い痛み。階段や曲げ伸ばしで「引っかかり感」や「ロッキング(動かなくなる)」が起こる。

内側側副靭帯損傷

スポーツや転倒で膝に外力が加わったときに発症。内側に鋭い痛み、不安定感や腫れを伴う。

タナ障害

滑膜ヒダの炎症で膝内側に違和感や痛み。屈伸時に「カクッ」と音が出ることもあり、若年層やスポーツをする人に多い。

膝の外側が痛いときに考えられる原因

膝の外側が痛いときに考えられる原因膝の外側はランニングや階段昇降で負担がかかりやすく、スポーツ障害として現れやすい部位です。

腸脛靭帯炎(ランナー膝)

ランニングや自転車で繰り返し膝を使うと炎症が起こり、特に階段の下りや長時間走行で外側が痛む。

外側半月板損傷

外側の半月板が損傷し、鋭い痛みや膝の引っかかり感。スポーツや加齢が原因。ロッキングや可動域制限が特徴。

外側側副靭帯損傷

膝の外側に強い外力が加わることで発症。外側の鋭い痛み、腫れ、不安定感を伴い、重度では歩行困難になることも。

階段で膝が痛いときの原因

階段で膝が痛いときの原因と対処法「階段を昇ると痛い」「降りると痛い」といった症状は、膝前面や内側に負担が集中しているサインです。

大腿四頭筋の筋力低下

太ももの前の筋肉が弱まると膝蓋骨(お皿)を支えられず、階段で痛みが出やすい。

変形性膝関節症

軟骨のすり減りで膝に負担がかかり、階段昇降で痛みが悪化。進行すると日常生活にも支障。

膝蓋大腿関節のトラブル

膝蓋骨が大腿骨と擦れ合い、階段やしゃがむ動作で膝前面に痛み。

💡膝の痛みは「部位」や「動作シーン」によって原因がある程度推測できます。

ただし、症状の背景には病気が隠れていることも多く、放置すると悪化のリスクがあります。長引く膝痛は、早めに整形外科での診断を受けることが大切です。

膝痛に隠れている可能性のある病気一覧

上述の通り、膝の痛みは部位や状況によってある程度の原因が推測できますが、背景には病気が隠れていることも少なくありません。
ここでは整形外科で診断される代表的な疾患と、その特徴を整理します。

変形性膝関節症

加齢や軟骨のすり減りで関節が変形。膝の内側に多く、動き出しや階段(特に下り)で痛み、進行すると安静時痛も。

半月板損傷

膝のクッション役が損傷。鋭い痛みのほか「引っかかり感」「ロッキング(急に動かなくなる)」が特徴。

靭帯損傷(前十字靭帯・内側側副靭帯など)

スポーツや転倒による外力で発症。強い痛み、腫れ、不安定感を伴い、歩行困難になることも。

膝蓋大腿関節症

膝蓋骨(お皿)が大腿骨と擦れ合い、膝前面に痛み。階段やしゃがむ動作で増悪。

リウマチ性関節炎

自己免疫異常による炎症性疾患。左右対称の膝痛や朝のこわばりが典型。進行すると関節破壊のリスクあり。

痛風・偽痛風

関節に結晶が沈着し、突然の激しい痛みを起こす。膝が赤く腫れ、熱感を伴い、歩けないほどになることも。

膝が痛いときにやってはいけないこと

膝が痛いとき、正しいセルフケアを意識することは大切ですが、逆に「やってはいけない行動」を知らないと症状を悪化させてしまうことがあります。代表的なNG行動をまとめます。

無理して運動を続ける

「少し痛いけど大丈夫だろう」と運動やスポーツを続けると、炎症や損傷が悪化するリスクがあります。特にランニングやジャンプ動作は膝に強い負担をかけるため注意が必要です。

自己流で強いストレッチやマッサージをする

痛みのある部位を強く伸ばしたり押したりすると、炎症が悪化することもあります。ストレッチやマッサージは痛みが落ち着いてから専門家の指導のもとで行いましょう。

サポーターや湿布だけで放置する

サポーターや湿布は一時的な補助には有効ですが、原因そのものを解決するものではありません。「貼って安心」で終わらせるのではなく、長引く痛みは医療機関で原因を確認することが大切です。

階段や正座を繰り返すなど膝に負担をかける

痛みがあるときに階段の上り下りや正座を続けると、関節や軟骨にさらに負担がかかり、症状の進行につながります。できるだけ平地移動を心がけ、膝を休ませましょう。

膝の痛みを和らげるセルフケアと病院へ行くべき目安

先ほど挙げた「膝が痛いときにやってはいけない行動」を避けると同時に、正しいセルフケアを実践することが大切です。セルフケアを取り入れることで膝への負担を減らし、痛みの改善や再発予防につながります。
ただし、「セルフケアで良くならない」「膝が腫れて熱を持つ」などの症状がある場合は、自己判断で放置せず、整形外科で原因を確認することが重要です。

自宅でできるセルフケア

筋力強化

特に大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)を鍛えると膝の安定性が増します。無理のない範囲で椅子に座ったままゆっくり膝を曲げ伸ばしする運動(ニーエクステンション)などが有効です。

※スクワットは膝への負担が大きく痛みの増悪につながります!

ストレッチ

太ももやふくらはぎの筋肉をやさしく伸ばし、関節周囲の柔軟性を保つことが大切です。痛みが強いときは避けましょう。

体重管理

体重が増えると膝への負担も大きくなります。食事改善や有酸素運動で適正体重を保つことが予防にもつながります。

温熱療法/冷却

慢性的な痛みやこわばり → 温めて血行を改善。急な腫れや炎症 → 冷却で炎症を抑える。

受診すべきサイン

次のような症状がある場合は、整形外科の受診を検討してください。

  • 膝が大きく腫れて熱を持つ
  • 歩けないほど痛い、関節が動かない
  • 安静時や夜間にも痛みが強い
  • 2週間以上たっても痛みが改善しない
  • しびれや膝のぐらつきを伴う

これらは病気の進行サインであり、放置すると治療が難しくなることもあります。
ポイントは「セルフケアで改善が見られるか」と「赤旗サイン(危険症状)があるか」。
迷ったときは早めに整形外科を受診するのが安心です。